特別受益と寄与分

感情や心情よりも厳しい判定が実情です。

遺産分割において、特別受益や寄与分が主たる論点で、最初からそれを主張する方がいます。過度の期待を持っての主張は、遺産の範囲や評価の問題が宙に浮いてしまい、相続人間で遺産分割協議が成立せずに、「争族」に発展してしまう場合があります。遺産分割協議時の親族間での争いは、取り返しのつかない不幸な結果を招きかねません。

特別受益や寄与分については、各相続人の事情や見解の差によるものもありますが、実務上は家庭裁判所の調停においても算定しずらい物です。民法の規定による特別受益と寄与分の説明が下記になります。

特別受益とは

民法に規定があります。遺産分割に際して「共同相続人中に被相続人から遺贈を受け、又は、婚姻、養子縁組、生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始時に有した財産の価額に、贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条により算定した相続分の中からその遺贈、贈与の価額を控除した残額を、その者の相続分とする」

計算式に置き直してみると、(相続開始時の財産+生前贈与分)×法定相続分−特別受益分(遺贈、贈与)=特別受益者の具体的相続分になります。

特別受益者の範囲と対象

特別受益者の範囲

民法の条文に、「共同相続人」と書かれていますので、共同相続人であることが原則になります。したがって、相続人の配偶者や子供や孫に対して贈与した場合には、間接受益者ではありますが、特別受益者にならないことになります。

特別受益の対象

遺贈・生前贈与・婚姻、養子縁組の為の贈与・生計の資本としての贈与・学資・不動産の贈与・お祝い金等・生活費の援助・金銭、動産等の贈与・借地権、借家権の承継・土地、建物の無償使用などになります。それぞれの評価は、相続開始時点を基準とした評価額になります。

寄与分とは

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条条から第902条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

寄与分の範囲と対象

民法の条文に、「共同相続人」と書かれていますので、共同相続人であることが原則になります。つまり被相続人の財産の維持・増加のために、特別の寄与があったと認められる場合。範囲は・特別の家事(通常の家事は除く)・被相続人の事業に対する労務の提供・財産上の給付・被相続人に対する扶養や療養看護です。

この労務の提供とは、提供した労務に相当する報酬を得ていた場合は認められません。

扶養や療養看護では、夫婦間の協力義務や、親族間の扶養義務などの範囲で行なわれる行為は特別の寄与には該当しないとされています。

高齢者の介護と寄与分の関係

扶養義務と介護度の関係

「扶養の義務がある者が、その義務の履行として行った扶養については、特別の寄与とは言わない」最高裁判所家庭局の指摘。年老いた親の面倒を見た者は、相続の際、面倒をみなかった相続人に比べて有利な取り扱いを受けるべきという意識は、心情としては理解されますが、扶養義務の履行に基づく介護、援助は、寄与分の問題とは何らかかわりがないと考えられています。

この扶養義務とは異なり特別の寄与行為として認められるのは、高齢者が要介護2度以上の場合です。その際にも、介護による寄与行為を開始した時点で、被相続人にどのような財産が有ったのか、そして、自分が寄与行為を行ったことにより、その財産がどのように維持され、増加しているのかといった内容を説明しなければ、寄与分の主張はできません。

遺産分割協議における寄与分

寄与行為が開始された時点からの実日数で算定されます

寄与分をどのくらいとするかは、相続人間での協議で決めますが、協議で解決しない場合は、寄与者の請求により、家庭裁判所が定めます。寄与行為により維持、又は増加したと考えられる財産の価額が寄与分となり、寄与分の程度を金額に換算する方法と遺産全体に対する寄与の程度の割合で定める方法とがあります。

金額に換算する方法では、介護報酬基準額×療養看護日数×裁量的割合(0.5〜0.8)の算定公式が利用されています。ここでは療養看護(介護)日数について10年とか20年と主張される方もいらしゃいますが、実務上は寄与が開始された時点とその内容の説明が認めらた場合には認められる場合もありますが、現実的にはごく希であり、大幅に減額されている様子です。

程度の割合で定める方法でも、遺産総額の何割も認めれる場合はごく希です。 特別受益や寄与分に過度の期待を持っての主張は、遺産分割協議ではなかなか馴染まないものになっています。


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