承継した権利義務を、承認するか放棄するかは相続人の意思表示です

相続人は、相続の開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)つまり、相続は相続人に認識に関係なく被相続人の死亡により当然に効果が生じることになります。 そこで、民法では、相続の効果を全面的に承認する(単純承認)か、相続財産の限度で債務の責任を負う条件で承認する(限定承認)か、相続の効果を全面的に拒否する(放棄)かを、相続人の自由な選択に任せています。


まずは事実調査と法令の確認

相続人が承認・放棄をするには相続財産の内容を知る必要があるので、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月間の熟慮期間が設けられています。その期間内に相続財産を調査し、承認または放棄をしなければなりません(民法915条)



平成18年の司法統計によると、相続放棄の申述受理件数は149,514件。限定承認の受理件数は1,000件です。

熟慮期間は3ヶ月

相続人となった人が遺産の相続を放棄しようとするときは、相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条、938条)この相続放棄の申述は、申述書という書面を作成して行うことになります。

相続放棄の効果は、相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)


限定承認は特殊な場合になります

限定承認は、一種の清算手続きになりますので、相続人全員が共同して行わなければならないことや、限定承認者は限定承認をした後5日以内に、いっさいの相続債権者及び受遺者に対して一定期間内に債権の届出をすることを公示したり、また清算手続きについて報告義務がありまので、現実的には特殊な場合に利用されます。


放棄は家庭裁判所の手続きです。

相続放棄の手続きは、家庭裁判所の審判事項になります。これは許可を得る性格のものではなく、相続放棄申述受理申立をしその受理によって効力を生じます。

相続の承認・放棄をした場合は、たとえ熟慮期間内であっても、その撤回は原則にできません(民法919条)

家庭裁判所への相続放棄手続きは、被相続人の最後の居住地を管轄する家庭裁判所へ、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に相続放棄申述書を申立て(提出)し、この申述を受理する審判によって相続放棄が成立し効力が発生します。


具体的な手続きは

申述受理の申立に当たって必要なものは、申述書、収入印紙800円、郵便切手(80円切手5枚を余納)、添付書類です。余納の郵便切手は裁判所によって異なります。東京家庭裁判所では、手続き等の事前確認が電話で出来ますし、家庭裁判所へ出向けばその場で相談に応じてくれます。

添付書類は、

1.被相続人の住民票除票(発行日から3ヶ月以内のもの)

2.申述人の印鑑

3.戸籍謄本(発行日から3ヶ月以内のもので、改製原戸籍、徐籍謄本も含む)


特に、戸籍謄本に付いては、申述人によって若干の違いがあります。


申述人が配偶者の場合

被相続人の死亡時及び配偶者現在の戸籍謄本が必要です。

申述人が第一順位である(子)である場合

申述人と被相続人の同籍時から被相続人の死亡までの継続した戸籍謄本と、申述人(子)の出生から現在までの継続した戸籍謄本が必要になります。

申述人が第二順位(直系尊属)の場合

戸籍謄本等は子の場合と同じですが、先順位者がいる場合はその人の放棄が受理されていないと申述できません。これは申述人が第三順位である(兄弟姉妹)の時も同様です。兄弟姉妹の場合には被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本も必要になります。

申述人が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者の場合

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本。被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本。被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本。申述人が代襲相続人の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本

これらの戸籍謄本の取り寄せは、転籍地の市区町村に郵送等で依頼することになり、以外に時間が掛ります。相続開始からの熟慮期間内に申述書を提出するためには、相続財産を調査し、法定相続人を特定して、それぞれの方がご判断して、相続放棄の手続きに移行知ることが一般的ですので、熟慮期間満了の直前では間に合わない場合もあります。必要な書類が不足している場合には、受付時や後日に追完書類一覧が送付され、それらを用紙して送付することで、受付がされる場合もあります。


申述書提出から受理証明書まで

申述書を提出すると、事件番号、担当係、受付年月日が記入された家事審判事件受付カードを渡されます。その後は、放棄の意思と現住所確認や、審理手続きの為に一定の事柄(相続を知った日・手続き・意思確認・放棄の理由等)を書面にて照会があり、所定事項を記入し押印して期限までに返送後して、家庭裁判所にて審理され受理されます。

照会書に回答後2週間前後で、家庭裁判所から「相続放棄申述受理書」が郵送され相続放棄が完了します。受理後に相続放棄申述受理証明書を申請すると、そこに記載されている事項が相続放棄の証明になります。


申述受理の申立から、照会を経て審判までの期間は、追完書類の送付や照会への記載内容によって変動しますが、一般的な事例では1か月程度になります。

家庭裁判所の手続きについては、被相続人の最後の居住地を管轄する、各裁判所に事前に確認をして下さい。


熟慮期間の伸長も可能です

相続財産が確定しない等の理由により、相続放棄の3か月以内という申述期間を伸ばす手続(相続放棄の期間伸長)を家庭裁判所に申立てることができます。延長期間は3ヶ月間延長という決定が多く、合算すると相続開始より6か月以内になります。


相続財産の調査と法令や手続きを確認する

相続人は、相続の開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。その後は相続人の意思表示を3ヶ月以内に行わなければなりません。

遺産調査を行い、法定相続人を確認し、事実証明を添付した財産目録と相続相関図を作成したうえで、相続人が承認または放棄の意思表示を行い。放棄の場合は家庭裁判所への手続きを行い、承認される場合は遺産分割協議に移行します。

被相続人が亡くなってから49日位までに、相続財産を調査し、法定相続人の戸籍等を取り寄せて、その後の方針を決めて、相続手続きのキーパーソンを決めて置くことが、大切です。


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