尊厳死宣言公正証書について

自己決定権にもとづく意思を尊重する

尊厳死という用語は、比較的新しく、法律用語ではありません。

一般的な定義は、「病気が「不治かつ末期」になったときに、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置をやめてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることです。つまり自分らしく生きたいと願う延長線上にある、自分らしく死にたいのひとつの意思表示になります。

尊厳死は現代の延命治療技術がもたらした過剰な延命医療行為ですが、ただし、言葉の定義も、該当する法令もなく、許容されるための要件等の議論はつくされておらず、社会的な認知を受けているとは言えないのが実情です。


尊厳死宣言公正証書

「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にする、というものです。

公証役場での取扱いは、事実に関する証書作成になります。公証人は、自分で直接に見たり聞いたりした内容を公正証書にする事実実験公正証書の作成することができます。  手数料は、事実実験に要した時間と証書作成に要した時間の合計時間1時間までごとに1万1000円です(手数料令26条)。事実実験が休日や午後7時以降に行われたときは、手数料の10分の5が加算されます。


尊厳死宣言公正証書の文例(日本公証人連合会ホームページより)

尊厳死宣言公正証書  

  本公証人は、尊厳死宣言者○○○○の嘱託により、平成○○年○月○日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
  

第1条 私○○○○は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。

   1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名 以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。  

   2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしてもかまいません。


第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。

     妻    ○ ○ ○ ○   昭和  年 月 日生

     長男  ○ ○ ○ ○   平成  年 月 日生

私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間として尊厳を保った安らかな死を迎えることができるよう御配慮ください。


第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これら方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。


第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。



注意すべき点

終末医療の在り方についての医師と家族または家族相互の意見の対立が想定される場合があります。尊厳死の実現には、医師と家族の協力が不可欠ですので、相互の意見の対立があっては前提条件を欠くことになりますので、あらかじめご家族の了承を得られることをお薦め致します。

次に、判断能力と真意の担保が必要になります。

そして、生命倫理と社会常識に逸脱しないことが必要になります。

日本尊厳死協会について

2007年5月現在で、全国で120,280名の方が会員です。

日本尊厳死協会は1976年に、「自分の傷病が治る見込みがなく、死が迫ってきたときには、自ら「死の在り方を選ぶ権利」を持とう、そしてその権利を社会に認めてもらおうという目的で設立されました。

会員になると、「尊厳死の宣言書」に署名押印して、その宣言書が日本尊厳死協会に保管委託され、会員証カードとそのコピーが郵送されてきます。

協会については様々なご意見がある様子ですが、尊厳死宣言公正証書の前に、是非とも問い合わせをされ、概要を確認されることをお薦め致します。

2007/11/15現在の会員数は121,147人、65歳以上の方は99,894人で全体の82.5%です。

日本尊厳死協会ホームページ http://www.songenshi-kyokai.com/

終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインについて

厚生労働省厚生労働省医政局総務課より、平成19年5月にガイドラインが発表されました。

新聞等でも報道されましたが、これからの議論の方向性や問題点が読み取れます。
参考資料に全文を添付しました。

公正証書遺言や任意後見契約の際に

尊厳死宣言公正証書は、公正証書遺言や任意後見契約時に、併せての手続きをお薦め致します。

尊厳死宣言は、死亡直前の事項に関するもので、遺言は死後事項に関するものですので、遺言の付言事項(法定外事項)としては適していません。献体を希望する意思表示も作成することができます。

公証人が、嘱託人(本人)の尊厳死宣言に関する陳述を録取して作成する、私権事実実験公正証書になります。

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